2009年2月5日木曜日

産む日3

さらにつづき。「産む日」最終回です。

あの、、暇な時によんでください。笑

ウイダーインゼリーというものは正直好きな食べ物ではありません。
それでも
バナナは、私の好みを熟知した夫が、青っぽいのを買って来てくれました。

とにかく口を動かした方がいいと言われて(すぐ寝てしまうから)
両方モグモグ口に放り込みます。うう。味がわからない。

「弱まってる…?」

というささやきあう声が遠くに聞こえました。
もう時計は見ていません。

「産もうよ。とにかく動いて進めましょう。絶対できるから」

何回目かのこの励ましでなんとか奮起。
だって、もう、こんな状態やだし。早く赤ちゃん見たい。

「痛みににげちゃだめ。そこに向かってみて」

どのタイミングか忘れましたが、もう私は意地になりました。

「絶対産みます」

……ここに来ているんだから至極当たり前のことですが。
何分かおきに、こう宣言するようになりました(むしろじぶんに言い聞かせてた)

まったく感覚無くスタスタ足が進んで、階段の上り下りをしたり
お産を進める為にトイレに入りいきみながら進めてみたり。
準備がなんとかそこで調い、部屋に戻るときの歩みもかなり確かなものでした。

ああ、私、体力すごいついてたのかも。

呆然とそんなことを考えます。

この助産院では「目的を持たない一時間以上の散歩」
を全ての妊婦のノルマにしていたのですが
あのときの勝手に足が進む感じ、いつの間にか遠くにいるときの感じ。

戻って来て、一緒に産むべくスタンバイしていた夫に
肩越しにバナナとウイダーインゼリーを差し出されると
こんどは自主的に口に運べました。ああ、美味しい。

別に○永からなにももらってはいないのですが
ウイダーインゼリーは、ほんとうにCMのごとく。
夫にしがみつきながら口に運び、ごくごくいくと
○PのCMように、体の奥からものすごい力がわいてきます。

「そうそう、上手よ。そこに向かって。もう頭がちょっと出ていますよ」

…私も、もっとお弟子さんを上手にほめよう。
…かなりやる気がちがう。

頭が出るまでが大変でした。
「目をとじちゃだめ。出る所みて!」
これも、マタニティヨーガで使った動き。あ、あれだ。なんて思う。
確か腹筋がすごいねなんて褒められたから、きっとできる。と自信。
声を出しながらたくさんいきみました。

「あ!」
「もうファー、ファーと息をのがしてー!」

と言われた時、なにかが降りて行く感覚とものすごい快感が私にやってきました。

「うわー。きもちいい!」

あれは、強がりの感想なのかと思ってた。

すごい。なんだこれ。
しかも、目の前には私とへその緒でつながった生物。
この子がおなかにいたんだ。

たくさん泣きながら
「気持ちよかった。また産みたい」
と言ってしまい、
「こんな思いしてこんなすぐ言う人あんまりいないわ」
と院長宗さんにあきれられました。

ちょっと、アレなんですけど
陣痛の痛みって、その後のあの産む瞬間の快感の為にあるんじゃないかと
そんなことを思ってしまうほど、気持ちのよい時間でした。

ぼろぼろ泣いている夫がへその緒を切ってくれて
ぶじ、赤ちゃん(本当に真っ赤)は自分で呼吸を始めました。

時計をみたら13時半過ぎ。
破水からのタイムリミットがあるため、がんばって産んでしまい
出血がかなりあったようですが、これって安産なんだって。
うん。気持ちよかったし、お互い元気だし。

すぐにだっこして、あたため合いました。

「9時の時点であの状態で、よく昼間に産めましたね。おめでとう」

宗さんに言われてしみじみしました。
ここで産めてよかった。私にも出来たんだ。

***********

助産院で産むひとや、自宅で産むひとも
最近徐々にまた増えてはいるようですが、まだまだとっても少ないそうです。
私も病院はどこ?ってよく聞かれました。

みんながみんな希望どおりにはいかないとおもいますし
私もどうなるかわからなかったわけだけど
もし興味があって自分の体と向き合ってみたいなら
ぜひ自然分娩を体験してみたら素敵だなと思います。

病院は、安心して赤ちゃんを産める場所。
助産院は、赤ちゃんを産みたい妊婦を育てる場所、のような気がします。

私も、きっとこれからいろいろもっとあるだろうけど
少しだけ、自信をもってのりこえられるかな、と思いました。
それは、赤ちゃんと、この助産院に教えてもらったことです。

これからも、できるかぎりのこと、あきらめないでやってみようかな。

産めた。

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